立川志らく悲痛…弟子・らく朝さん死去に「おい、らく朝、来世では名人になるんだぞ!」
落語家・立川志らく(57)が11日、弟子の立川らく朝(たてかわ・らくちょう、本名・福澤恒利=ふくざわ・つねとし)さんが2日に死去したことを受けて、所属事務所のワタナベエンターテインメントを通じて追悼のコメントを発表した。
「立川らく朝の訃報を聞いて、いくら年上でも弟子には違いないので師匠より先に逝くやつがあるかと言う思いです。らく朝が私の門を叩いた時は現役の医者でした。年も10歳も上。いくらなんでも年上の弟子は困るので断りました。
しかし落語家になるという若い頃の夢を叶えるには最後のチャンスだというその情熱に押され客分の弟子にしました。一年くらい経過して前座修行からきちんとやって本当の落語家になりたいと言ってきたので談志に相談すると面白そうだから弟子にしちまえと。
ただ前座の雑用仕事は免除してその代わり週に一席、落語を教え、約2年で50席覚え二つ目に昇進。当時は内科医と兼業というスタイルで落語家活動をしておりました。やがて真打に昇進して健康落語なる新作をやるようになり、医者も辞めて落語家一本で活動を始め、私の後を追いワタナベエンターテインメントに入りこれからという時の悲劇。残念で仕方ありません。
実はらく朝は私の弟子でありながら命の恩人でもありました。私の体調が悪いのを見抜き、嫌がる私を検査して私がバセドー病である事を発見したのです。放っておいたら3年くらいで私は心筋梗塞で倒れていたはずとのこと。また彼の妻がバセドー病の専門医。だから私はらく朝に言いました。
『お前は俺の命を救うために弟子になったんだなあ』。らく朝の訃報は本当に残念です。でも落語家になるというのは来世の楽しみのはずが、今生でその夢を叶えることが出来たので素晴らしい人生だったと思っています。『おい、らく朝、来世では名人になるんだぞ!』 立川志らく」by結城洲央
ついに『鬼滅』が全世界の興収で年間トップへ…ハリウッド作品以外では初? その数字、そして意義とは?
日本でも興行収入の新記録を打ち立てた『劇映画「鬼滅の刃」無限列車編』が、アメリカでの公開でも好成績を収め、全世界で年間の興行収入ランキングで1位になる見込みとなった。
5/10の時点で、米国の映画興収データサイト「THE NUMBERS」の集計で1位で、「見込み」というのは、もうひとつの、よりメジャーな興収サイト「Box Office Mojo」では、まだ僅差の2位。しかし北米および日本の数字の推移や、この4月から公開された国も多いことから、間もなく1位になるのは確実だ。そもそも全世界の興行収入を完璧に網羅するのは現在でも難しい作業で、為替レートの計算法もあったりして、こうしたズレは生じる。いずれにしても快挙である。
これは「2020年公開作品」という枠組みの1位で、2021年の今も興行収入が加算され続けている結果である。つまり、2020年公開の別の映画が今から世界的大ブームを起こしたら、抜かれる可能性もある(あくまでも“可能性”の話です)。
基本的に世界年間トップになるのは、ハリウッドの超大作。2020年は、新型コロナウイルスの影響で、ハリウッド大作の公開が大幅に減少したことで、中国映画の『八佰』がトップを維持していたのだが、これを『鬼滅』が抜いた(あるいは抜く)ことになる。
5/10の段階で、全世界の興収は
『鬼滅』 4億7460万ドル
『八佰』 4億7257万5002ドル
2020年公開作で、この2本に続くのが
第3位『愛しの故郷』(中国)
第4位『バッドボーイズ フォー・ライフ』
第5位『TENET テネット』
第6位『ソニック・ザ・ムービー』
第7位『ドクター・ドリトル』
第8位『ジャン・ズーヤー:神々の伝説』(中国、アニメ)
第9位『送你一朶小紅花』(中国)
第10位『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』
(※以上は、THE NUMBERSの数字とランキング)
見てのとおり、中国映画がベスト10に4本ランクイン。ハリウッド映画は全体の半分の5本である。コロナの影響が少なかったことが要因となり、中国は年間の興行収入でアメリカを抜いて世界トップに立った。その中国映画を抑えて『鬼滅』が、作品としてはトップになるわけである。
2位の『八佰』は、1937年、第二次上海事変における最後の戦闘を描いたアクション大作。日本軍からの攻撃に屈しなかった中国国民党の守備隊「八百壮士」の運命ということで、中国では観客の支持を受けやすい内容。
『八佰』は、全世界興収のじつに99.7%が中国国内での数字。つまり中国の興収のみで、『鬼滅』に抜かれるまで世界1位だったわけである。『鬼滅』の場合は、日本での興収が全世界の約80%。基本、日本での数字が大きく影響しているのだが、『八佰』に比べても世界的な広がりは明らかだ。
『鬼滅』が年間の世界興収トップに立つのはめでたいが、もちろん2019年以前の記録に及ばないのは、想像のとおり。
過去10年の年間世界興収1位の記録を振り返ると
2019年『アベンジャーズ/エンドゲーム』 27億9750万ドル
2018年『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 20億4835万ドル
2017年『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』 13億3253万ドル
2016年『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 11億5329万ドル
2015年『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 20億6822万ドル
2014年『トランスフォーマー/ロストエイジ』 11億405万ドル
2013年『アナと雪の女王』 12億8080万ドル
2012年『アベンジャーズ』 15億1881万ドル
2011年『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』 13億4151万ドル
2010年『トイ・ストーリー3』 10億6696万ドル
このように直近のトップ作品と比べると、さすがに『鬼滅』の4億ドル台という数字は低い。改めて新型コロナの映画興行への影響が実感される。コロナ禍直前の2019年のランクに当てはめると、『鬼滅』の現在の数字は年間ランキングの16位である。そして現在の『鬼滅』の数字で1位になるとしたら、1996年まで時代を遡らなければならない。その年の1位は『インデペンデンス・デイ』の3億616万ドルだった。
ちなみに世界興収の年間ベスト10は、ハリウッド作品で埋め尽くされてきたのが現状。2019年でさえ、10本すべてハリウッド映画だった。2017年のみ、7位に中国映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』がランクインしている。この時の数字が8億7032万ドルで、『鬼滅』がそこまで伸びれば、アメリカ映画以外での最高記録になるのだが、さすがにそれは難しい。
繰り返すが、この「全世界」の数字は、「北米」、「日本」など単独のエリアと違って、細かい数字まで完璧とは言い難い。北米以外の興収もまとめて記録され始めたのが、1998年あたりで(それ以前も『タイタニック』『ジュラシック・パーク』など特大ヒットの作品は全世界の数字が記録として残っている)、現在も、すべての国の数字が正確に加算されてはいないと考えられる。集計サイトによって数字が多少、前後していたりして、あくまでも「指標」だ。そしてもちろん興収なので、入場者数のランクとなれば、入場料金が安かった時代と比較できるものではない。
しかし、記録として残る年間の世界興行収入ランキングで、ハリウッド大作以外でトップに立つのは、『鬼滅』が初めてのことであり、コロナ禍のハンデは差し置いても、ファンにとっては素直に喜ぶべき「歴史的事件」と言っていいのではないか。by結城洲央
エイベックス・松浦勝人会長にインスタ「裏アカ」発覚! まさかの本物が呟く“桁外れな私生活”
「心の底からびっくりしています。いまどき、とんでもなく豪快な人がいるなと思ってフォローしていた “謎のSNSアカウント” の正体が、まさか自分の勤めていた会社の会長だったなんて……」(元エイベックス社員)
コロナ禍で沈む日本で、「まぶしすぎる男」がインスタグラム上に突然現われた。
「30年以上にわたって年収5億円以上をキープ」という、にわかには信じがたいプロフィルを掲げるその男性は、フェラーリ、ポルシェ、マクラーレン、ランボルギーニなど、名だたる高級車を購入したとの投稿を、連日投下している。いわく、「車を買うのが日課さ」。実際にアカウントを覗けば、きらびやかな高級輸入車の写真が次々と投下されている。
男性のアカウントのコメント欄には、「なんでド金持ちなんですか?」「なんの仕事をしている人ですか?」「本当に買っているんですか?」などと、次々と質問が寄せられている。 一部界隈で話題になっている、この男性アカウントの “正体” について、音楽業界関係者が話す。
「すでに業界内では気づいている人もいるようですが、あれはエイベックス代表取締役会長である松浦勝人氏の “裏アカウント” なんです。先日、松浦氏が自身の公式ツイッターで披露した赤いフェラーリの写真と同じものが、その6日も前に、この謎の男性のアカウントにも投稿されていて、噂が本当だったと証明された形になりました」 この松浦氏の “裏アカ” に登場するのは、高級車だけではない。別の日には、「寝巻きはヴィトンを使い捨てで」という文言とともに、顔は見えないものの、松浦氏らしき男性が横たわる写真が投稿されている。 さらには、1000万円以上する高級腕時計を「恥ずかしくなって窓の外に投げ捨てた」などという投稿も。事実か否かは松浦氏のみが知るところだが、その豪快さは、庶民とは文字どおり桁が違う。
エイベックスといえば、東証1部に上場している、日本を代表する音楽関連企業。そして、創業者である松浦氏は、浜崎あゆみらを育てた敏腕プロデューサーでもある。そんな大物経営者が、“裏アカウント” で自由気ままな発信を楽しんでいるとは、まるでドラマのような話ではないか。
「松浦氏と浜崎あゆみの恋愛を描いて、2020年に大きな話題を呼んだドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)では、松浦氏をモデルにした敏腕プロデューサー『マサ』が、売れないタレントだった『アユ』を米国に留学させるなど、カネに糸目をつけず、彼女をスターに育て上げる常識離れぶりが評判になりました。
松浦氏自身、ドラマには入れ込んでいて、制作費は度外視して、『車は90年代のものを実際に走らせてください』と指示するなど、時代考証でもいっさい妥協しなかったそうです」(芸能関係者)
なるほど、“裏アカ” で公開している規格外なスケールの大きさこそが、松浦氏の “本当の顔” なのだろう。前出の元社員は同アカウントについて、こう語る。 「社内でも、松浦会長は完全に “雲の上の人”。なかなか接点はないんですが、自分がおもしろがって見ていた謎のアカウントが、ご本人のものだったとは……。正直に言うと、めちゃくちゃなカネ遣いなのに、どこかかわいげがある人で、けっこう好きだったんです(笑)」
映画『釣りバカ日誌』では、主人公のハマちゃんは自分の勤務先の社長と気づかずに、スーさんと “親友” になってしまう。このSNS時代、あなたがフォローしているその “匿名アカ” も、もしかすると――。by結城洲央
『鬼滅の刃』が全米でも爆進…! 日本アニメに「新たな可能性」をもたらす“ワケ”
『鬼滅の刃』、全米でも“爆進”
国内歴代興行収入第1位398億円(5月5日現在)の記録を打ち立てる『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』。TVシリーズが深夜アニメ放送とこれまで“ニッチ”に思われた場所からの偉業達成もあり、昨年秋10月16日の公開以来、大きな話題を呼んでいる。さらにその勢いは、いまや海を飛び越え米国にも及びはじめた。
4月23日、本作が全米公開した。これが週末3日間の興行収入で米国とカナダを合わせた北米市場で2114万ドルと、日本円で約23億円もの大ヒットのスタートを切った。
同週の1位ワーナー・ブラザース映画の『モータルコンバット』の2330万ドルとの差はごくわずか。翌第2週には1位に躍進した。日本映画が週末興行収入でトップになるのは、1999年の『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』以来、実に22年ぶりの快挙である。
特に今回は大作映画のヒットに通常必要とされる3000~4000スクリーンの約半分の1600スクリーンでの公開であることを考えれば、現地の驚きと劇場の活況も想像がつくだろう。今後は日本映画過去最大のヒットになった『ミュウツーの逆襲』と、同じポケモン映画の『幻のポケモン ルギア爆誕』(2000年)にどこまで迫り、超えるかが焦点だ。
日本アニメの“立ち位置”変える?
華々しい数字の話題に加え、『鬼滅の刃』の米国での大ヒットは、近年ますます人気が広がっている日本アニメの世界での立ち位置にも変化を与えそうだ。『鬼滅の刃』ヒットの実績をもとに、さらに日本のアニメが海外を目指すことも出来る。
遡れば2010年代以降の日本アニメの人気拡大は、NetflixやAmazonプライム ビデオといった映像プラットフォームの急激な普及に理由がある。実は日本アニメは2000年代半ば頃、海外でのTV放送が減少し、映像ソフトの売上げが急降下するなど、必ずしも順風ではなかった。
なかでも大手映画会社の市場支配力が強く、伝統的なビジネスが優先される映画興行は、日本アニメが最も参入し難い市場だった。日本でヒットしたアニメでもヒットにつながらない。それ以前に作品公開が少なく、仮に公開されたとしてもスクリーン数は少なく、上映期間も極めて短いケースがほとんどだからだ。
ではなぜ今回『鬼滅の刃』は、その壁を突き崩したのか。
ひとつは映画配給を担当した「ファニメーション」という企業の存在だ。1994年に日本アニメ専門の配給・ライセンス会社としてテキサスで設立された同社は長年、独立系の日本アニメ会社として経営されてきた。それが2017年にソニー・ピクチャーズに買収され、傘下に入った。ハリウッド大手映画会社の一角であるソニー・ピクチャーズのサポートは少なくない効果を発揮しただろう。
そもそも米国の映画配給の多くは、大手映画会社の事業である。このため劇場上映される作品の決定や力の入れ具合は大手映画会社の意向に左右されがちだ。自社利益を目指す映画会社は自社製作の映画配給を優先する。日本の製作会社が作ったアニメを積極的に取り上げる理由はない。
『鬼滅の刃』の製作は日本のアニプレックスが中心だ。そしてアニプレックスは国内ソニーミュージックの子会社である。つまり『鬼滅の刃』は製作と配給が共にソニーグループにあり、そのヒットは製作面でも配給面でも自社の利益になる。
ソニーグループの、映画部門と音楽部門は共同企画・事業はあまりみられず、商品流通も別々とこれまで距離感があった。それが近年、エンタテインメント部門で連携強化が進んでいる。なかでも海外の日本アニメ事業は、連携の象徴になっている。
アニプレックスとソニー・ピクチャーズは共同出資のファニメーション・グローバルを設立し、その傘下にファニメーションをはじめとする世界各国のアニメ事業会社をまとめる。今回の配給もファニメーションとアニプレックスの共同配給のかたちだ。
「アニメ=子ども」の打破
ただし『鬼滅の刃』のヒット理由は、ビジネス環境だけではない。より重要なのはグローバルの映画市場における日本アニメのメジャー化だ。北米の日本映画の最大ヒットは『ポケモン』で、さらにこれまで上位には『千と千尋の神隠し』や『崖の上のポニョ』といったスタジオジブリの作品が上位を占めてきた。キッズやファミリーに向けた作品だ。
しかし『鬼滅の刃』はこれらとは大きく異なる。映画上映にあたり17歳未満は保護者の同伴が必要な「R指定」を受けている。子どもの多くは容易に見られない。『鬼滅の刃』の北米でのヒットが画期的なのは、大人が見るアニメとしての成功である。
もともと欧米を中心に海外では、アニメーションは子どものものとされてきた。日本アニメは長年「アニメーション=子ども」という概念の打破に向けて挑戦を続け、テレビや映像ソフト、配信といった分野ではハイティーンや大人が観るジャンルを築いた。それでも多くの人にとっては、限られた人たちが見るニッチな作品であった。
しかし『鬼滅の刃』は大衆文化の牙城である映画館で数百万人を動員できる。これまでニッチであった若者世代に向けたアニメがメインストリームになりえることを示す。
この効果は日本アニメに新たな可能性を生み出すだろう。今後はこれまで大きく扱われなかった大人向けのアニメ劇場公開も可能になる。
大人向けアニメはトレンドになるか
子ども以外に向けたアニメーションの北米での広がりは、実は日本アニメ以外でも始まっている。2018年公開の映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が大ヒットしている。実写ファンも念頭に2Dスタイルで青年層をターゲットにしたものだ。
北米での興行収入1億9000万ドルはディズニーやピクサーのキッズ向け3DCGアニメに匹敵する。『スパイダーバース』のヒットにも、長年、子どもだけのものでないとしてきた日本アニメの影響もあったのではないか。 大人向けアニメーションが映画業界の新たなトレンドになれば、この分野で最先端を走っている日本にもチャンスが大きい。
日本アニメは長年メインストリームになりうる作品として、子供から大人まで幅広い世代に向けたスタジオジブリのようなスタイルを目指してきた。しかし、『鬼滅の刃』はR指定の深夜アニメがグローバルの大衆市場でも戦えることを明らかにした。イノベーションとは、これまでの常識と異なるところから生まれるようだ。
もちろん競争は楽ではない。『スパイダーバース』のように米国製作の映画が強さを発揮するだろう。R指定でもヒットした『鬼滅の刃』はあらたな市場の可能性を感じさせるが、PG12とはいえ、子どもたちも普通に『鬼滅の刃』を見る日本のアニメ表現の考え方との違いは小さくない。
文化の違いを乗り越えて
文化の問題は、米国以外にもある。映画の海外市場では昨今、中国市場の重要性も増している。『鬼滅の刃』はアジアでも大ヒットになったが、中国公開はまだ決まっていない。理由は明らかにされていないが、上映審査に時間がかかっているようだ。年々検閲が厳しくなる中国市場に、日本アニメがいまと同じように今後もアクセスできる保障はない。
グローバルであることと、日本的であることのバランスの難しさにどう折り合いをつけていくのか、古くて新しい問題がつきまとう。
それでも確実に言えるのは、日本アニメは映画業界でも世界の主要プレイヤーのひとつになった、ということだ。『鬼滅の刃』はそれを確認させるものであった。
日本のアドバンテージも少なからずある。その強みは、日本コンテンツの認知度、エンタメとしての誘因力がかつてなく高まっていることである。忍者やコスプレといったアイコンやカルチャーも定着している。大正時代で着物姿のキャラクターが登場する『鬼滅の刃』が受け入れられた理由だ。“日本コンテンツ”は、観客にアピールする力を持っている。
ただそれは時代のあだ花にもなりえるし、新たな発展の起点にもなりえる。どちらになるかは日本の取り組み次第。いま日本のアニメ界は、業界の未来をかけた分岐点にたっている。今後数年が、日本アニメの未来を決める時期なのではないだろうか。by結城洲央
ワクチンの特許除外 独ビオンテックも反対 ファイザーと共同開発
ドイツ政府報道官は6日、新型コロナウイルスワクチンに関する製薬会社の特許権を一時的に適用除外するとの米国の方針について、ワクチン生産に「深刻な事態」を生じさせるとして反対の姿勢を示した。米ブルームバーグ通信などが報じた。
バイデン米政権が途上国などでのワクチン生産を広げるために適用除外を支持したことにより、世界貿易機関(WTO)でのワクチン特許を巡る交渉の進展が期待されたが、ドイツが反対を表明したことにより、協議の行方が見通せなくなっている。
報道によると、ドイツ政府報道官は「知的財産の保護はイノベーションの源泉で、今後もそうでなければならない」と指摘。研究開発への投資によって利益が生まれるという励みがなくなれば、製薬会社が将来のワクチン生産に積極的に動かなくなるとの見解を示した。
ドイツメディアによると、米製薬大手ファイザーとワクチンを共同開発したバイオ企業ビオンテック(本社・ドイツ西部マインツ)も6日、特許権の適用除外に反対の意向を示した。適用除外にした場合、ワクチンの品質や安全性などが保証されない恐れがあるとしている。【ベルリン念佛明奈】by結城洲央
映画「鬼滅の刃」の海外での大ヒットで考える、日本アニメの新しいヒットの方程式
劇場版「鬼滅の刃」無限列車編の快進撃が、海外でも止まりません。
映画が昨年10月に日本で公開されてから、もう半年が経過しましたが、いまでも多数の映画館で公開が継続されその興行収入は400億円まであと一歩のところまで到達。
さらに、先週4月23日にはアメリカでも公開。
初週末の興行成績が約22億円と、米国内で公開された外国語映画のオープニングの興行成績の歴代1位を塗り替える好成績をおさめています。
同じタイミングで公開された映画「モータルコンバット」に惜しくもオープニング興行収入では敗れて2位となりましたが、「モータルコンバット」が約3000館で公開されているのに対して、「鬼滅の刃」は1600館での上映での結果。
さらにアメリカでの上映はR指定だったことを考えると、間違いなく大成功と言えるでしょう。
これにより、「鬼滅の刃」の海外における総興行収入は81億円で、累計来場者数は878万人を超えたとのこと。
全世界的にコロナ禍で映画館の観客動員数が苦しむ中で、この数値は間違いなく大ヒットと言えます。
アニメの続編としての大ヒット
特に劇場版「鬼滅の刃」の海外での大ヒットで注目したいのは、この映画が本編の続編としての位置づけであるという点です。
「君の名は。」や「千と千尋の神隠し」は、基本的に映画単体で見る前提の映画です。
ところが、劇場版「鬼滅の刃」は、アニメのストーリを見ていることが前提になっている映画です。
私の知り合いの海外在住の方に聞いた限りでは、海外でも特に登場人物やあらすじなどの解説がないまま、日本同様に映画が開始するようですから、初見の人にはハードルが高い映画と言うこともできます。
当然ながら、海外では日本のようにアニメの「鬼滅の刃」がテレビの地上波で無料放送されているわけではありませんから、誰もが気軽にアニメのストーリーを見れる環境にはありません。
それにもかかわらず、劇場版「鬼滅の刃」がここまでの世界的大ヒットをおさめているのには、やはりネット動画配信サービスの普及が影響しているようです。
「鬼滅の刃」はNetflixの各国のトップ10に
特に影響が大きいのは、おそらくNetflixでしょう。
実はNetflixでは3年前まではあまりアニメに力を入れてなかったそうですが、ここ数年で利用者が急増。
全世界で1億世帯以上が視聴し、視聴率も前年比1.5倍になるほどの急成長をしているそうです。
その結果、日本だけでなく世界的に人気ランキングのトップ10にアニメ作品がランクインすることが急増しているようです。
なにしろNetflixの会員数は世界で2億以上。
日本の地上デジタル放送の視聴可能性対数は約5,000万世帯と言われていますから、単純に考えてその4倍の市場がNetflixだけで存在することになります。
実際に、Netflixのランキングを確認できるサービスで「鬼滅の刃」(海外では「Demon Slayer」)のランキングの推移を確認してみると、今週も多くの国で鬼滅の刃がNetflixのランキングのトップ10入りをしていることが分かります。
海外でも日本同様に、Netflixなどの動画配信サービスでアニメを手軽に視聴できるようになったため、アニメを見てファンになったひとたちがコロナ禍でも映画館に足を運び、今回の大ヒットにつながっていると言えるでしょう。
アメリカにおける「Demon Slayer」の検索数のグラフを見ても、映画公開のはるか前である2019年頃から検索数が盛り上がっていることが分かります。
「鬼滅の刃」を最優秀作品賞に選んだクランチロール
また、日本アニメの拡がりを考える上で忘れてはいけないのが、今年ソニーピークチャーズが買収して話題になった「クランチロール」です。
日本国内ではサービスを提供していないため、あまり国内では認知度が高くありませんが、日本のアニメを海外でも見れるサービスとして、海外のアニメファンが多く集うサービスです。
その有料会員数は300万人と、Netflixに比べると決して多くはありませんが、コアなアニメファンが集まっているのが特徴。
特に、このクランチロールが主催しているCrunchyrollアワードは、年々その注目度を増しており、この2020年のアワードで最優秀作品賞に選ばれたのが「鬼滅の刃」でした。
従来の日本のテレビアニメは、日本で人気が確立したものの一部が、海外のテレビ局の目にとまって翻訳されて放送される、という展開が一般的だったため、多くのアニメ作品を海外のアニメファンは視聴することができませんでした。
それがクランチロールの登場やNetflixのアニメの取扱い拡大により、日本公開とほぼ同じタイミングで海外のファンも日本の最新アニメを楽しむことができるようになってきています。
つまり、これからは日本よりも先に海外でヒットするアニメが出てくる可能性も高くなっているということです。
日本よりも海外で有名なサンリオキャラクター
実は、日本よりも先に海外でヒットするというパターンは、すでにいくつも事例が出てきています。
例えば、昨年のサンリオキャラクター大賞では、「アグレッシブ烈子」というキャラクターが、日本では45位にもかかわらず、アメリカで3位にランクインしたことが日本でも話題になっていました。
これは、この「アグレッシブ烈子」がNetflixオリジナルシリーズとしてアニメ化されていることが影響しています。
こういうケースは、サンリオの歴史のなかでもまだまだ珍しいケースのようですが、Netflixの影響力の高さが良く分かる事例です。
クランチロールのようなアニメ配信サービスにより、コアなアニメファンから、日本のアニメ作品の評判が広まり、それがNetflixのような多くの人が視聴できる動画配信サービスにより、さらに多くの人が気軽に視聴できる環境が整ったということは、日本アニメ業界にとっても非常に大きい環境変化と言えると思います。
日本のアニメファンが世界で増える好循環に
「鬼滅の刃」が、ここまでの世界的大ヒットになっているのは、もちろん日本国内での大きな話題化が影響しているのは間違いありません。
ただ、「鬼滅の刃」が増やしてくれた日本アニメファンが、そのまま他の日本のアニメを見るようになってくれる可能性が高いことも間違いないでしょう。
実際に、Netflixの世界のランキングを見てまわると、以前から海外でも人気があるといわれる「進撃の巨人」をはじめ、今年のCrunchyrollアワードの最優秀作品賞を受賞した「呪術廻戦」や、Crunchyrollアワード受賞の常連だった「僕のヒーローアカデミア」など、様々なアニメが様々な国でトップ10入りをしていることが分かります。
日本アニメのヒット作が増えれば増えるほど、日本アニメを見て育った世界の若者達が、さらに日本のアニメのファンになってくれる可能性が拡がるはず。
当然、これは日本のアニメクリエイターやアニメ作品にとっても様々な好影響があるはずです。
まずは「鬼滅の刃」の、世界でのさらなる快進撃を期待したいと思います。by結城洲央